論文を真剣に読まなくてはいけない理由

06月22日

beagle歯科雑誌をみていると、色々な記事にたくさんの論文が引用されている。しかも海外の文献がほとんどだ。さて、この記事を書いた人は本当にこれらの論文を読んだことがあるのだろうか・・・。論文を読む習慣のある歯科医師など、まず滅多におめにかかることなどない。大学にいれば読めるようになるかといえば、「一部の人は」というに過ぎない。ましてや開業医が忙しい診療の合間をぬって毎月送られてくる雑誌を隅から隅まで目を通すなどは難しい。私にも、恥ずかしながら、読んでいないままに積み重ねられていくJournalたちがある。

しかし、論文にはもっと敬意を払わなくてはいけない理由がある。

多くの研究は、ヒトに臨床試験を行う前に必ず動物実験を行う。歯の研究であれば、最終的には屠殺して歯の周囲の組織切片をとる。たった1枚のスライドのために一匹または一頭の動物が殺されてしまうのだ。たとえばよく使われるのがビーグル犬。写真の犬だ。かわいい。このイヌの歯に試験的ななにかをしたり、抜歯してインプラントを埋めたりするのだが、イヌの歯はラボのテクニシャンたちによって毎日きれいに磨かれる。イヌだし、人間によくなつく。それを何年か育てて、結果殺してしまう。その悲しみは尋常ではないだろう。その日のラボはまるでお葬式のようだと聞いた。そのような犠牲の上に研究が成り立っている。そのデータを軽くみてはいけない。

しかし、ろくに読みもしないで誰かが読んだ話を人づてに聞いて、さももっともらしく自分の意見とする輩がとても多いというのが日本の現状だ。人づてというのは伝言ゲームのようなもので、どこかで間違ってしまうということを知っておかなければならない。間違ったまま雑誌に投稿してしまうなどということも平然と行われている。そしてただ受け身なだけの普通の読者たちは、それらの話を丸々信じてしまい、自分の患者に間違っていることをやってしまったり。だから、自分で読めるようになっておかないといけないのだ。

私たちが今回起こした本では、特に「うそは書かない」ことに徹底的に留意したつもりだ。うそではなくても、自分の中にあやふやすぎる知識が多くて本当に困った。これ本当かなぁとか疑問に思ってしまうと、もう筆が進まない。頭の中に、あれなんだったっけな、というもやもやが渦巻き、調べものの毎日だった。それでも日々の忙しい診療の中では時間もなく深く掘り下げられないままのことも多く、いまだにもやもやしていたりすることもある。しかし、引用した論文は必ず読んでいる。読んだだけで忘れてしまうのもたくさんあるが・・。

私には、他人に伝えるのならば正しいことを伝えたいという思いがある。論文を襟を正して読まなくてはいけない理由も知っている。英語嫌いなどと言ってる暇はない。

歯科医療は経験でほとんどがカバーできる。しかし、そこに正しい知識が加われば、より正確な治療ができる。今日も衛生士からある患者にエムドゲインを使用すべきかどうか質問を受けたが、適応症ではないと断定した。世の中には、適応症でもないのに勝手にバンバンと処置をしてしまう先生も多くて驚く。患者に説明して同意を得て使うのならわかるが、適応症もしらずに治ると信じて使っているから性質が悪い。インプラントもそう。

すくなくとも、自分と自分のところの歯科医師、歯科衛生士には正しい知識を徹底的に身につけてもらいたいものだ。そのためにも私は勉強しなくてはいけない。

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