歯科医師はサービスに徹するべきか?

09月16日

050713_okura_1今日、こんな質問を受けた。

「先生は医療技術とサービスをどのくらいの比率で考えていますか?」

私は開業医であるから、患者さんに対してまったく無愛想でよいなどと考えることはない。そんなことをしたら、たちまち患者さんなどいなくなってしまう。

それでは、患者さんの顔色ばかりうかがうようなことをしても良いのだろうか?それは違うと思う。

「患者さんがそう望むから」という理由で、治療方針を決定する先生は多い。私はそれを「迎合」と呼び、強く否定している。

私の治療方針決定の経緯は、
「目の前の患者さんに対し、自分の出来うる最良、最善の治療は何か」
を第一にもってくる。
患者さんにとってベストなことはなにか?それに対して自分のベストを尽くすことこそが使命だと考えるからだ。
コストを考えるのはその後だ。

先日あったケース。
40代女性。8年前、歯周病進行中だったが処置は中断。歯周補綴(保険ではできない)を提案するも「値段が高い」との理由で却下。自己責任の言質をいただき、保険でできる治療を選択。
1年前、そのブリッジが外れてやってきたが、今さらどうすることもできずにそのままつけた。
最近、いよいよとなり抜歯から「まだ40代」なのに大きな入れ歯へ。

ここで思うのが、8年前のあの時に私の提案する「Quality of Life」を考えた治療を受け入れてくださってさえいれば、今、いやこれからの人生を入れ歯ですごすなどということにはならなかった可能性が高い。やはり保険外診療は高いので敬遠されがちだが、後で入れ歯になって初めてその苦痛と直面し、8年前の選択に後悔をする。

こんなことはしょっちゅうある。
10年後に感謝してもらえるような治療。やりたいことはこれに尽きる。

結局、妥協の治療を行った私を患者さんはまったく評価してくれていない。
これが問題なのだ。

もし8年前に何とか理解をいただき、自分の考えるベストと思える治療をうけていただいていたならば、今というよりはもっと先の話だが、きっと感謝の言葉をいただけていたのではないかと思うのだ。それは、患者さんが「治療に満足したから」に他ならない。

実際、そのように満足して下さっている患者さんは多数いらっしゃる。お顔を拝見するたびに「なんでも噛めています。こんな治療をしてくださって、ありがとうございました」と何度も感謝の言葉をいただく。こんな喜びは他にない。

「この患者さんはうちに来て人生が変わった」と私が思っている患者さんが何人もいらっしゃる。その方たちが10年後、「あの歯科医院に行って良かった」と今じゃなくていい、10年後にそう言ってもらえたならば本望。
そんなことを考えて日々仕事をしている。

冒頭の質問に戻るが、歯科医師免許を手にしてからただの一度も、私は患者さんにサービス精神を優先して接したことはない。

自信のなさから、今、するなと言っている妥協はよくしていたけれど。
勤務医の時などは、自分の力不足を申し訳なく思い、患者さんにも「至らなくてすみません」としょっちゅう謝ってばかりいた。

これについては次回。

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