プロメテウスの罠

10月15日

朝日新聞の朝刊に気になる連載がある。
もしこの通りだったとしたならば、恐ろしいこと。しかし、これってどうみてもノンフィクションだし・・・。
あーぁ、政府のいうことを信じてはいけないな。
国益のためならば、国民などどうなっても良いという姿勢がよくわかる。しかし、国民を脅威にさらすことが国益か?違うだろう。

「頼む、逃げてくれ」
これが政府の口からは出ない。
緊急時にいったいなんのメンツが必要なのだろうか?
かなりの量の放射線物質が恐らく海水中にも流れ出たであろうことは、疑う余地もない。食物連鎖の中で、放射線が蓄積された魚を我々が食べるということになるが、これって大丈夫なのか?
近海物には気をつける。でも、鯛やら平目やら、美味しいんだよね~。

この連載、これからも注目していきたい。

頼む、逃げてくれ 〈プロメテウスの罠〉

写真・図版写真・図版

■防護服の男(1)

 福島県浪江町の津島地区。東京電力福島第一原発から約30キロ北西の山あいにある。

 原発事故から一夜明けた3月12日、原発10キロ圏内の海沿いの地域から、1万人の人たちが津島地区に逃れてきた。小中学校や公民館、寺だけでは足りず、人々は民家にも泊めてもらった。

 菅野(かんの)みずえ(59)の家にも朝から次々と人がやってきて、夜には25人になった。多くが親戚や知人だったが、見知らぬ人もいた。

 築180年の古民家を壊して新築した家だ。門構えが立派で、敷地は広い。20畳の大部屋もある。避難者を受け入れるにはちょうどよかった。門の中は人々の車でいっぱいになった。

 「原発で何が起きたのか知らないが、ここまで来れば大丈夫だろう」。人々はとりあえずほっとした表情だった。

 みずえは2台の圧力鍋で米を7合ずつ炊き、晩飯は握り飯と豚汁だった。着の身着のままの避難者たちは大部屋に集まり、握り飯にかぶりついた。

 夕食の後、人々は自己紹介しあい、共同生活のルールを決めた。

 一、便器が詰まるのを避けるため、トイレットペーパーは横の段ボール箱に捨てる。

 一、炊事や配膳はみんなで手伝う。

 一、お互い遠慮するのはやめよう……。

 人々は菅野家の2部屋に分かれて寝ることになった。みずえは家にあるだけの布団を出した。

 そのころ、外に出たみずえは、家の前に白いワゴン車が止まっていることに気づいた。中には白の防護服を着た男が2人乗っており、みずえに向かって何か叫んだ。しかしよく聞き取れない。

 「何? どうしたの?」

 みずえが尋ねた。

 「なんでこんな所にいるんだ! 頼む、逃げてくれ」

 みずえはびっくりした。

 「逃げろといっても……、ここは避難所ですから」

 車の2人がおりてきた。2人ともガスマスクを着けていた。

 「放射性物質が拡散しているんだ」。真剣な物言いで、切迫した雰囲気だ。

 家の前の道路は国道114号で、避難所に入りきれない人たちの車がびっしりと停車している。2人の男は、車から外に出た人たちにも「早く車の中に戻れ」と叫んでいた。

 2人の男は、そのまま福島市方面に走り去った。役場の支所に行くでもなく、掲示板に警告を張り出すでもなかった。

 政府は10キロ圏外は安全だと言っていた。なのになぜ、あの2人は防護服を着て、ガスマスクまでしていたのだろう。だいたいあの人たちは誰なのか。

 みずえは疑問に思ったが、とにかく急いで家に戻り、避難者たちにそれを伝えた。(前田基行)

     ◇

 ギリシャ神話によると、人類に火を与えたのはプロメテウスだった。

 火を得たことで人類は文明を発達させた。化石燃料の火は生産力をさらに伸ばし、やがて人類は原子の火を獲得する。それは「夢のエネルギー」とも形容された。しかし、落とし穴があった。

 プロメテウスによって文明を得た人類が、いま原子の火に悩んでいる。福島第一原発の破綻(はたん)を背景に、国、民、電力を考える。

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