ある先生との揉め事

04月02日

AQB印象先日の歯科医師会総会後の懇親会の席で、ある先生と良く言えばディスカッション、平たく言えば口論になった。

もともとインプラントの切開線の位置などについて質問を受けていたのだが、角化粘膜の有無についてや、上部構造の形態についての考え方を話していた。しかしいざこざの発端は私のAQBインプラント批判だ。

正確にはAQBインプラントの中でもワンピース型、しかも上部構造への考え方のみへの批判なのだが、ユーザーであるこの先生はAQBインプラントそのものを否定されたと思ったらしく、かなりお怒りになられた。私の発言はそうとらえられてもおかしくはなかったのは確かだし、反省はしている。

AQBインプラントは私は採用してはいないが、このインプラントシステムの売りは再結晶HAという表面性状だ。世界的大手他メーカーの営業の方も、この表面性状の優位性は認識しているらしく、隠れたところで高評価はされている。システム自体は(学術的な意味ではなく=激安インプラントの代名詞として)日本限定でものすごく認知されているが、あまりに臨床から入り過ぎていてエビデンスがかなり不十分なため、実際の成果は公平に評価されていないで、報告者の主観をもとにユーザーの口コミで広まっている。

通常は基礎実験の後、動物実験、そして人体での検証を経て、はじめて公に患者さんに用いることができる。しかしそれには莫大な費用がかかるために、これができるのは世界的シェアをもつ数社のみ。国産の小さな会社などは最初の方の過程はすっ飛ばして細々と臨床実験から入る。もちろん臨床例も少ない。ということが基本としてある。

しかし、私が疑問を持っているのは写真で見られるような、印象のことだ。このワンピース型は植立した時から歯茎の上に棒状のものが突き出している。数ヶ月待ってそれを型採りするのだが、これがかなりアバウトなのだ。はっきり言ってしまうと、「適合もへったくれもない」ようなもので、予後に非常に不安を感じざるをえない。

まず、型採りが上のように変形しやすい材料を使っていること(メーカーHPより抜粋)。通常は寒天ーアルジネートの連合印象など、どのインプラントメーカーも勧めていない。理由は精度が劣るから。
次にマージンの形態はナイフエッジでよしとしていること。どの補綴の本を見ても、冠のマージンをナイフエッジにしなさいとは書いていない。ワックスパターンの変形などから適合精度が悪くなるから。
そして、マージン位置を歯肉縁下にすること。適合精度の悪い冠のマージンを歯肉縁下に設定したらどうなるか。普通の歯ならアタッチメントロスが進む。インプラント周囲組織の炎症への抵抗性は天然歯に劣ることは広く知られている!なのに、なぜ上記理由で精度の悪い冠のマージンをあえて歯肉縁下にいれることを推奨するのか?

このような学術的理論に欠けるようなことが、なぜ食いとめられないのか。それはこのメーカーが「口腔外科」の先生としか組んでいないからに他ならない。

埋入の簡便さ、補綴のしやすさは確かにあるだろうし、骨との結合も良いのはあるだろう。しかし、口腔外科の先生は埋めるのは一生懸命やるが、補綴の専門家ではないし、術後の管理を担う歯周病の専門家でもない。本来メーカーはこの手の専門家もチームに入れておかねばならなかったはずだ。他の大手メーカーでは、必ず歯周病や補綴の面からも色々なことが報告されて、その都度反映されている。

私がその先生に意見したのは、その先生が補綴のご出身だったからだ。なのにこんなのでいいわけ?と率直に聞きすぎた。謝罪の意は表したが許していただけるかどうか・・・。

ちなみにAQBのHP(一般の方ではなく歯科医師向け)には「患者獲得のノウハウ」なるものが掲載してあるが、こんなのも大手では考えられない。しかも、「欠損補綴にはインプラントがベスト」とか、「半永久に使える」とかうまく誘導するような言葉で勧誘を、みたいなことが書いてあり、メーカーとしてのモラルを疑う。インプラントがベストなんてことはないし、半永久なんてこともない。

とまぁ批判もしたが、2ピースインプラントは印象含め割と普通な感じだったので、これなら大手他メーカーとも品質で勝負できるのではないかと思う。骨結合は良さそうという利点があるから。

というわけで、ここ数日インプラントとティッシュマネージメントということばかり考えている。
なんの偶然か、先週全国的な勉強会である「日本インプラント研究会」からセレクテッドレクチャーの講演依頼を受けたばかりだ。まさしくインプラントのティッシュマネージメントについてなのだが、どんなストーリーにしようかを含め頭の整理にはなっている。懺悔の意も含め、よい講演にしなくてはと思っている。

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